澤村氏のライカMLレンズ・ベストセレクションを読んだ。
先に言っておくが、当ブログを読んでいる方は、すでにご存じではあるとは思うが、私は、ライカに対して、そこまで思入れがあるわけでもなく、ましてやMマウントやLマウントのレンズは、現状は一本も持っていない。
これは、私自身が、自らこれ以上沼に沈まないようにという自戒の念をこめて、一定のラインを引いているからというのが理由ではあるのだが、それでも周りに人たちが、「ライカのレンズは良い」という話を聞くと、やはり自分も欲しくなるし、使ってみたいと思うわけである。
意図的に、情報をシャットアウトしていた感もあるということで、ライカマウントのレンズについての情報が乏しい自分が読んだ感想というのも、他の方の参考になるのかもしれないということで、読後の感想を載せたいと思う。
本書を読んで感じたこと
表紙を見た瞬間に感じたことは、原点回帰という言葉だ。オールドレンズ・ライフもvol.1に関しては、同じ水色のポップなカラーを使っている。
今でこそ、デジタル一眼レフにオールドレンズをつけて撮影することは、市民権を得た感があるが、オールドレンズ・ライフの1冊目が出た当時は、フルサイズのミラーレス機もなく、まだ限られた人たちの秘密の遊びに近い感覚だったように思える。しかもマニア向けの感が否めなかった。そのため、オールドレンズ・ライフの1冊目は、もっと間口を広げようという筆者が意図があったように思われる。
今回についても、同様の色味を使っており、筆者が意図的に色を選択したのかはわからないが、少なくとも私には、この本は、「ライカマウントのレンズは、怖くないよ。もっとみんな気楽に使っていこうよ」という悪魔の囁きを感じてしまうのは、深読みしすぎだろうか。
実際の内容については、新旧様々なレンズを紹介しており、詳しい人であれば、聞いたことがあるレンズが並んでおり、目新しさは少ないかもしれないが、少し驚いたのは、現行レンズの中に、KIPONや7Artisan、更には改造レンズまでが紹介されていたことだ。普段あまりカメラ雑誌が取り上げないレンズの作例があるのは、ある意味貴重だと感じた。
書籍の構成について
構成は以下のような感じ。
- ライカMLマウントレンズ入門
- Old Leica lens M
- OLD LEICA LENS L39
- made in Japan
- Russia lens
- Leica
- ZEISS
- Voigtländer
- LOMOGRAPHY
- KIPON
- 7Artisans
- Bricolage Studio NOCTO
タイトルからライカレンズの紹介がほとんどなのではないかと想像させるが、実際には章としては3つほどで、それ以外は、ノンライツという、財布にやさしい構成になっていた(笑)。まぁどれも明るい単焦点が多いのでそれなりの値段はしますが。
全体構成として章の数が多く、非常にボリュームがあるように思われるかもしれないが、ページ数は190ページほどになるため、1つの章あたりに割けるページ数が限られてしまっている。そのため、どうしてもメジャーどころの紹介にとどまっており、以前よりMLマウントレンズを使用している人にとっては、物足りない構成かもしれないが、書籍のタイトルにもある通り、ベストセレクションとあるので、筆者の独断と偏見で選ばれたおすすめの構成ということであれば、納得できるし、なにより幅広いジャンルからチョイスしているため、すべてのレンズを使ったことがあるという人は、ほぼいないと思われるので、自分の持っているレンズに飽きてしまっている方や新天地を求めている人にはお勧めできる内容だと思う。
今回の書籍で私が一番驚いたのは、6章以降の現行レンズの紹介となっており、紙面の半分以上が新品で購入できるレンズということだ。
オールドレンズ界の第一人者である筆者としては珍しく、個人的には「どうしたんだ?澤村!」と一瞬思ったのだが、冒頭でもお話しした通り、買いやすい・誰でも手に取りやすいというコンセプトを目指しているのであれば納得できるし、オールドレンズに頑なにこだわるよりも、素直に自分の好きな描写のレンズを使っていこうよという方向性もありなのではないだろうか。
また、12章については、割と禁断と思われている不可逆的なレンズ改造について取り上げている。昔は、レンズを改造して、マウント変えるなんてもっての外という、雰囲気だったが、α7登場後からは、そういった雰囲気も変わってきたのかもしれないと感じさせる内容だった。
まとめ
筆者の本は、毎回、作例も多く、レンズを選ぶ際に非常に参考になる。今回の「ライカMLレンズ・ベストセレクション」についても同様のことが言え、次はどんなレンズを買おうかなと思っている人間にとっては、非常に良書(悪魔の書籍)なので、購入すると良いと思う。
ただ、今回の書籍に関しては、全体を読んで、若干コマーシャル感を感じてしまう部分があるという点は否めなかった。これは、どうしても現行レンズを紹介するとなった場合には避けて通れない部分かもしれない。
しかしながら、現行のレンズも紹介されているということは、何を買ってよいかわからない新規のユーザにとっては、結構重要な部分であることも事実だ。中古レンズを何本も持っており、中古レンズを購入することに違和感を感じない人にとっては、中古レンズを買うことは、それほど抵抗がない事かもしれないが、世の中には、中古に対して、不安を覚えて居たり、新品の製品がほしいという層もいることは事実だ。そういった人に対してもアプローチも考慮されており、まさに、だれが手にとっても楽しめるお勧めの1冊となっているのではないだろうか。